私たちはふだん、「目的地にはできるだけ早く、まっすぐ行くもの」と考えがちです。
痛みがあれば その痛みを取り除くこと が目的になります。
更年期でホルモンが足りないといわれれば、外から直接そのホルモンを補充すること が目的になります。
世の中でいう「効果的な方法」「最短な方法」
どうしてもその一点にまっすぐ向かう方法を見つけるのが「一番いいのだ」なりやすくなります。
その「最短・最小の効率化」では見落とされやすいことがあります。
痛みや不調は、ただそこに突然現れた“敵”ではなく、
その人の身体全体の流れのなかで現れているものでもあります。
だから、その一点だけを最短で消そうとすると、症状は消えても、
身体の適切なバランスまでは整うことがないのです。

ここで思い出したいのが、古い空間の考え方です。
古い建築や儀礼を見ると、少し違う発想があります。
そこでは、目的物に直線で向かわないのです。
下にある図はヒンドゥー寺院の周回路(pradakshina)です。
自分がここを歩いていると思って、begins here から矢印方向に歩いてみてください。
左回り、右回りをぐるぐるしていますね。
はい、俯瞰してみると、時計と反時計回りをぐるぐるしていることが分かりますが
実際にこの寺院を歩いている人は「右だ左だ、を意識しておらず」「ただ歩いている」という感覚でしょう。
回廊が折り返しながら中心のまわりを編むように動いている のですが気づきません。

そして、この図で面白いのは、中心へ一直線に行っていないことです。
外側から入り、何度も向きを変えながら、少しずつ中心との関係を深めていく。
しかも “Ends here” とあるので、中心に触れて終わるのではなく、決められた位置で巡礼が完結するんですね。
これは単なる遠回りではありません。
関係を整えながら 関係に近づくための動きです。
古い寺院や聖地では、中心にあるものへいきなり一直線に行かないことがあります。
門をくぐり、少し歩き、向きを変え、もうひとつ境界を越え、ようやく中心へ近づいていく。
そのあいだに、身体のリズムが勝手に少しずつ変わっていきます。
このとき大事なのは、単に「到着すること」ではありません。
近づく過程そのものが、その場所との関係をつくっているのです。
建築の世界では、これを動線として見ることができます。
つまり、建物は「見るもの」だけではなく、どう歩くかまで含めて設計されているということです。
神社でもよく似た感覚があります。
鳥居をくぐった瞬間にすぐ本殿へ触れるのではなく、
参道を歩き、手水で身を整え、拝殿の前で立ち止まります。
ここで身体が感じているのは、細かな右回り・左回りではありません。
もっと素朴に、中心がそこにあり、その中心との関係を保ちながら進むという感覚です。
だから、目的物は最初から見えていても、すぐには届かない。
少しずつ近づいていくあいだに、空間との距離感や気持ちや態度が整っていきます。
現代の感覚では、最短距離が合理的に見えます。
でも古い空間は、少し違うことを教えてくれます。
目的地に着くためではなく、着いたときに意味のある到着になるために、人は少し回り道をする。
その回り道は、ただの遠回りではありません。
そこには、あなたの身体と空間の関係を静かに整える知恵が残っている。
身体に対しても、同じことが言えるのです。
不具合を「なくす」ことだけではなく、
なぜそこに現れたのか、どんな流れの中でその場所に現れているのかを見ていく。
すると、症状だけを追いかけていたときとは、少し違う景色が見えてきます。
最短距離で消すことが、最善とは限りません。
一直線に押し切るというより、揺れや往復のなかで秩序が生まれる。
これは単なる遠回りではありません。
流れが安定し、エネルギーが分散され、全体のバランスが保たれ、厚みをもつ。
その感覚を取得していくのが楽しいでしょ❤️ (もちろんエゴは捨ててください。)
暗記問題ばっかやってちゃあ絶対に取得できないよ。
人が聖なるものにまっすぐ近づかないのには理由がある。
間合いや手順抜きで行こうとするから 痛いめみるのだ。
教科書の0ページ目に載せてほしいわ❤️

古事記の 天岩戸 の物語
天照大御神が岩戸に隠れ、世界は暗くなります。
ここで興味深いのは、神々がいきなり岩戸をこじ開けていないことです。
まずは以下のことを行なっていきました。
- 榊を立てる
- 鏡を置く
- 勾玉を飾る
- 神々が集まる
- 天宇受売命が舞う
そうして、場の空気が少しずつ変わっていきます。
つまり、中心に直接手をかける前に、周囲を整えているのです。
その結果、外の気配に惹かれて、天照大御神が少し戸を開きます。
中心を無理に動かそうとするのではなく、中心が自ら動き出す条件をつくる。
とても大事な感覚。
海外の神話でもこの手の言い伝えはたくさんあります。
そして、
